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アニメ 伝説の勇者の伝説(最終回) 第24話「遠い約束」によせての感想(長文注意) [アニメ 伝説の勇者の伝説]

関東圏では、12/16(木)の深夜にて放映されました、アニメ「伝説の勇者の伝説」

ありとあらゆる意味で、ひっじょ~~~に・・・・ラストがもう、心配で心配で心配で、一週間心臓に悪い事この上ない日々でしたが、ある意味『最悪の事態(ラストを見て、ちゃぶ台引っくり返したくなるようなエンド)』をありとあらゆるパターンにて(つまりは、過去において期待してみていたアニメやドラマなどで、最後の最後で・・・おい? こら? なめとんのくわあああああ!!!!!! 私のこのときめいた時間を全部返せ!となった多くの作品群を想起し)その中でも最低最悪にランクしているものを脳裏に描き、もし、そこまでひどいラストであったとしても『私の中での伝勇伝は、これ以外にない!!!』と、すでに原作でさえ完結していない小説だというのに、自分なりの『シオンとライナとフェリスの結末』を、ほとんど、自家生産寸前に物語を脳内で創りあげてまで、防波堤を作って構えていたのですが・・・・

(つか、そこまで警戒しないと見られないアニメってどうよ・・とは思うのですが、原作つきのアニメ化の場合で、原作が特に未完結の場合、アニメのラストは『俺達の戦いはこれからだ!!!』で締めればそれでいいとアニメ会社は思っているのか!?的なものが多すぎて、ほんとーに、ほんとーに、ほんとー・・・・・・・・に、心臓に悪かったのです、一週間・・・・おばか)


結論的には、私、このラストでいいです。

原作小説がいつ完結するか分かりませんが、原作小説が完結しなくても、もうこれでいいとさえ思いました。

最大の理由は、原作小説で現在進行している世界観・設定・展開その全てが、まるで「不幸のインフレこそが読者を楽しませるのだ、そして巻数を増やせるのだ。そして、最終的なオチに至るまではまだまだまだまだ大量に購読してもらって、お金を落としてもらうのだ~~~!!! ふははははは!!!!」という、誰の陰謀か?(出版社???)の幻聴が聞こえてきそうなほどだからです。

(まあ、巻数の多い小説って多かれ少なかれその傾向はあるとは思いますが、それにしても、ライトノベル系はそれが顕著なことが良くあるもので・・・)、その原作の「不幸のインフレテイスト」をラストにもってきて「続きは、原作小説買ってね!」というラストをアニメにもってこられたら、もう、「今まで、熱心に見てきた時間返せ!」と本気で叫んだことでしょう。

でも、そんなことはなかった。

そうではなかった。

キャラにブレがなく、心情の流れは、「前世(?)」的なものからしっかりと描かれ、音楽とのマッチングも素晴らしく、この先、どんなにかライナが大変になろうとも、絶対にライナもシオンも大丈夫!!!

と、勝手に確信させてくれるラストだったからです。
(アニメとしては、もうこれで合格点と思います。もうこの先は、視聴者が好きに創造・想像すればいいのです。ありがとう! ありがとうアニメスタッフの皆さん!!!)

と、さて、以下はかなりもろもろにネタバレになりますので、折りたたみます。

(ついでに、原作の大ファンの方には、かなり御免なさいかもしれませんが、私はあくまで『アニメ』の『伝説の勇者の伝説』に惚れてしまった人間なので、許してくださいっ! すみませんっ!!!!!)

まずは、オープニング…いきなりのスタートが「そして、勇者は戦って戦って、とうとう心を壊すまで戦って・・・」と、突然『遠い過去の伝説の黒い勇者』と、醜い化け物や女神達の戦いが繰り広げられ、その勇者がとうとう封印された時に彼を救ってくれたのが『寂しがりの悪魔』という伝説が語られるのですが、これが凄かった。

本来のオープニングの分の時間しかない中で「遠い過去において、勇者と寂しがりの悪魔の間に何があったのか」があますことなく描かれ、しかも、あのオープニングの曲も被せるという相乗効果!

この「過去編」だけで、私、完璧にノックアウトダウンに等しい衝撃を受けました。ええ、いい意味で!

「世界を破壊しなければ」と己が狂っても戦い続け、そのために「君は初めての友達だからいいよ」と無邪気に言う寂しがりの悪魔を犠牲にしてでも、それでも『世界』=『化け物の跋扈する異形の世界』を破壊しなければならない使命をひたすらにひたむきに遂行しようとする勇者は、けれど、あまりの戦いと、そしてその「世界の中心に巣食う」絶望に打ちひしがれて、でも、そうすると、またも、寂しがりの悪魔は己の身を差し出すのです。


「君にならいいよ」と。

全部あげると。苦しいなら自分が引き受けると。


それをして、ナレーションは淡々と「悪魔は馬鹿だったのです」とある種冷淡なほどに言い放つ。
これがまた効いている。


どこまでも、無邪気に己を差し出す「寂しがりの悪魔」と「世界のために」そんなにも無邪気な「友」であるはずの彼を犠牲にしてしまう「黒い勇者」

この二人は、寂しがりの悪魔が消えることで画面上消えてしまうのは、本当に消えたのかどうかは分からずとも、それとオーバーロールさせるように、「シオンの剣から逃げようと雨の中を走るライナ」が映され、そして、ライナもまたシオンに対し「お前にだったら殺されてやってもいいのかもな」と言うのです。

うわ~~~!!! 上手いっ!!!!!!

原作(知らなくても、知らない方が多分楽しめるこの展開!)がどうでもいいと思った(いい意味でですよ?)瞬間でした。


ずうっとアニメ伝勇伝でキャッチコピーで言い続けてきた「堕ちた勇者と寂しがりの悪魔の物語」「運命に翻弄され、それでも運命に抗おうとする者達の物語」が、この僅か数分で凝縮されて、その「意味」を視聴者に教えてくれました。


アニメオンリーで理解する限り、伝説の「堕ちた黒い勇者」と「寂しがりの悪魔」が、何故、まるで彼らが一度分解され、具象化されるかのように「シオン」と「ライナ」に体現されていったのか? の説明はまったくありません。(気になる人は、原作読んでくださいということでしょう)

でも、説明なんかなくても、充分でした。

ついでながら、「寂しがりの悪魔」は二つに過去において分かれていて、「黒い勇者」が絶望に苦しんで苦しんで苦しんだ時に差し出された方の属性が『世界の式を解くもの』と言われるもので、それがすなわちライナというとこまでは、アニメでも説明されてました。
(まあ、細かく見てくと、なんで、ライナが『世界の式を解くもの』で、ルシルが残り半分の『世界の式を編むもの』なのかの説明はナッシングでしたが、このアニメではそれは瑣末なこと。気になる人は、原作を読んでくださいませな!・・・ともいえそうな、すっぱりとした切りっぷりは、いっそ潔い脚本とむしろ舌を巻きました)

あと、まあ、原作ファン用なのでしょうが、ライナ母がライナ父によって「ライナを加護する存在」として仕込まれているというのは・・・・・・・うーん、これも多分、原作を読んでないとわかんないよ、な設定なのでしょうが、これも別に「ああ、前々回に、ライナ父らしき人物がライナの胸に仕込んだのってこれね」で、別にストーリーの理解には不便を来たさないので、私としては別にOK。

それよりもルシルが、「ライナを救いたい想いと、勇者の属性の狭間での苦しみ」の中でも、なお、「王」としての正気を保っているシオンをして、「だから彼を私は選んだ」と言い、逆にライナ母(というか、ライナの両親へのかな)に対して「正気? それはあなた方にこそ言いたい」という痛烈な一言が、とても良かった。

(設定としては、このアニメの最初の頃の話で、ルシルの屋敷で何かシオンが貰っていたっぽいのが、結局、かつて寂しがりの悪魔を世界のために犠牲にした勇者の属性というか力というかそのものというか、そういう『何か』なのでしょうが、まあ、それは『何か』程度で止めておいて・・・)


シオンは、どこまでも「皆を国を、そして誰よりも『化け物扱いされてるライナ』を救いたい」だけ。

だからこそ、シオンは本当に、『ライナが笑って昼寝できる国にしたい』と願って、ルシルから力を得たのだけれど、皮肉にも、その力は「ライナという友(というか、正確には、ライナが有する寂しがりの悪魔?)」を犠牲に欲してしまう属性つき。

そしたら、『愛する息子ライナを救おう』として、ありとあらゆる方法で、このライナの両親たら、『シオン(というか勇者属性)』の欲求への邪魔(?)、というか、ライナがシオンに殺されたり、伝説みたいに食われたり(シオンがライナの力を吸収するのか、絶望をライナに押し付けて永劫の苦しみに放り込むのか?まあどっちでもろくでもないことは確かですが・・・)を防ぐためとはいえ、その方法がねえ・・・(汗)

なんせ、あのルシルにーちゃんが呆れ果てるほど無茶しまくってるみたいなのですから(親が身体に仕込まれてるって何? それ?? 正気の沙汰?)・・・・。
そりゃまあ・・・・・・ルシルだって嫌味も言いたくなるでしょう。

ちなみに、アルファスティグマの瞳のアルアの両親は・・・ライナの両親と比べるとほんとに良識的でしたねえ・・・と今更思います。はい。
だって、アルアの父はアルアに対して最後まで「たとえ、父さんが殺されてもお前は生きろ」って・・・。

・・・あれが親の愛情の素直な発露と思うのですが、ライナの両親って、ライナの記憶に『ない』ぐらいな存在で、ライナの記憶にある限りライナは「魔眼保持者」として迫害されまくって、シオンに出会うまで「心は死んでいた」んですから。
そりゃもう、アルアの両親の愛と比べたら、ライナの両親は「ライナを救おう」と狂奔するあまりに、どこかライナの「心」は置き去りにしていた感が拭い去れないのですよ。


なので、ルシルのあの一言が痛快だったわけです。

『我が子ライナのためなら』という金科玉条で、それなら『(シオンが苦渋のあまりに再開せざるを得なかった惨い)人体実験も真っ青な、どー考えても正気の沙汰でないこと(だから、親がいつの間にか身体に仕込まれてるって・・・さあ・・・汗)。それも我が子のためなら平気』というある意味、見事なまでの『親のエゴと狂気』なライナ両親を、一言で、すっぱり!!! ですからねえ(拍手!)


実際のとこ、シオンはライナを失いたくないのだから、まるで、屍鬼の「吸血衝動に耐えるがごとく」必死に耐えて耐えて…。
でも、自分が耐えられなくなったら、『ライナは死ぬ事もできない、永劫の絶望の闇に落としてしまう』っていう・・・。
そのことに何より脅えているわけなので、確かに、シオンはほんとに正気なんですよね。


哀しいぐらいに正気。切ないぐらいにライナを想っているのも『正気』だから。

本当なら、自分がローランド王に即位さえすれば、狂った戦争も止められるし、馬鹿な身分差別や、貴族の横行による腐敗や搾取もやめさせることができるはずだった。

もちろん、すぐには難しくても、ライナみたいな「魔眼の持ち主」達のことだって、ローランドはガスタークのように「兵器」にしたりするのではなく、ちゃんと人間として同じ子供として保護して、一緒に笑い合える世界にする。できる。そう約束したから・・・ライナにそういう世界を見せるって約束したから・・・って、シオンはぎりぎりまでそう思うから苦しんで。


だけど、皮肉なぐらいに世界はシオンに意地悪で。


ローランドを安定させるための時間さえ、「貴族の粛清」「人体実験」・・・そんなものやりたくもなかったのに、でも、新興国ガスタークが凄まじい勢いで攻めてくるのが明らかな今は、もう「時間がなく」て、「王」としてのシオンは、至極「正気」のまま決断するしかなかった。


国内の平定のためには、貴族の粛清。
兵力の増強のためには人体実験による、禁じられた魔術の復活。

これは、言ってみれば、明治維新から日清戦争や果ては第二次大戦の開戦へと突き進んで行った日本の歴史を垣間見る思いがします。

明治維新は、本来は、閉塞した徳川の世と、外からの欧米列強の侵略の危機に対抗するための『防御』こそがまず先にあったはずなのに、世界中を巻き込む戦争へと時代はどんどんと急激に流れていって、明治維新の最中でさえ(世界史的には、犠牲の少ない革命との評価は高いとはいえ)同じ志の者がどれだけ死んでいったか。

そして、最終的に第二次大戦で、原爆投下されるほどの、空襲で一般市民が逃げ惑うほどの、そして沖縄、グアム、サイパンなどの痛ましい人柱を経て、ようやく「日本」は「平和」を得ることができた。
(それさえも、最近はまた危なくなっているような気配が濃厚で案じられてなりませんが、それでも、確かに、狂った戦争から日本は明治維新からスタートして第二次大戦で悲惨な犠牲を出し続けるまでの痛ましいことを経て、「今」の平和・・・それこそ昼寝できる世界を実現したわけです。それが一時的なものであろうとも)


この日本の歴史とどこか似ているようなローランド王国は、シオンが即位したことで、ほんの一時だけど、確かに「皆が搾取されないで、平民も笑って未来が見ることができる幸せな国、魔眼のアルアも受け入れ保護してくれる国」になった・・・。

それは、本当にライナにとっては「絵空事」としか思えなかったことで、だからこそ、23話でライナはシオンに感謝したのでしょう。


そして、それはほんの一瞬でも、多分ライナにとっては、「それを見せてくれた」だけでも、嬉しかったし、シオンにどれだけ感謝したことか・・・と思うのです。


なのに、シオンはそのある意味完璧主義者すぎるところや、優しすぎるところが裏目となり「ガスターク」という新興勢力(あとは、ティーア達、魔眼の集団もかな)との戦争はもう避けられないと「王」として分かってしまっているから、ライナには謝るしかできなかった。

23話のシオンの「ほんとうに・・・そうなら・・・良かったんだがな・・・」の台詞は、泣きたくなるほど切ないです。

誰よりも戦争が嫌いで、誰よりも人を犠牲にするのが嫌いなシオンが「正気を保ったまま、王としての責務のためには、犠牲を出す事を選択しなければならなかった悲劇」。
これ以上の悲劇はないでしょう。

思えば、伝説の黒い勇者も「世界=化け物の」を壊して、狂ったその世界でなく「人が安らげる世界」のために戦って・・・そして、戦いに疲れて心が壊れたということは、本質的にどれだけ優しさを内包していた存在であったことだろうかと想像に難くありません。

だからこそ、寂しがりの悪魔だって、伝説の黒い勇者が大好きだったのでしょう。
その身全てを捧げても、永劫の苦しみを引き受けても、後悔なんてしないぐらいに。


でも、戦争をすることを選んだ(というか、せざるを得ない状況に追い込まれた以上)、「伝説の勇者」の力を得てしまったシオンは、どれほど不安だったでしょう。
自分は、かつての勇者と同じように自分の絶望を「ライナ=寂しがりの悪魔の継承者?」に押し付け、ライナを「死」よりも酷い、永遠の絶望の闇に落としてしまう。

それぐらいなら、ライナを闇から救う唯一の方法は・・・探しても探しても探しても、「ライナを殺す」しかどうしても見つからないなら、と、泣きながら、泣きそうな顔でライナを殺そうとして・・・でも、「ライナ」が好きすぎて殺せないシオンの慟哭。


でも、ここで殺さなくても、シオンにとってはもはや全てが耐えられないほどに苦しくて。
だから、心を封じたのか、ある種の二重人格的なもう一人の自分=かつての黒い勇者=英雄王にと心を委ね、『ライナと笑って仕事をしていた幻』は夢の中へと封じてしまう、この切なさ。


ただし、英雄王もまたライナを殺しはしなかったのは、結局、どっちの人格もシオンだからなのでしょうね。

「殺すのがライナのため」と思っても殺せない。
「その力を得る(絶望の押し付け?)=ライナの消滅=食らう」をすれば、「世界」は救えるかもしれないけれど、ライナが救えるなら世界だってどうでもいいとさえ思ってしまうのだから、全身全霊でそれだけはしないと、それこそが、どこまでもシオンがシオンであることの証。



結局、牢に入れられたライナは手当もされてましたから、ちゃんとシオンは、自分がライナに手出しできないように、そんなことまで・・・・と思うと涙ものです。

フェリスが、そんなライナを涙ながらに「死んだかと思った!!」と牢やぶりしてまで迎えに来て、でも、泣きながらのフェリスがまたいい。

「シオンがおかしい」
とライナに訴える内容が
「泣きそうな顔で、ライナを殺したとシオンが笑うんだ。お前にライナを殺せるはずがないと言っても、あいつ、笑うんだ!泣きそうな顔で!ローランドは、隣国ネルファへ侵攻して民を殺戮しているのに、ローランドの国民はシオンを英雄王だ、世界の頂点に立つ王だって賞賛してる。おかしい。何もかもおかしい!!!」

ああ、ほんとに、美女が泣いているのに、やっぱりフェリスさん男前!

ええ、「おかしい」んですよ。それを、きぱっと言える貴女が大好きです、フェリスさんv
そして、さぞ、シオンに対して
「お前がライナを殺せるはずないだろう!!!!」と掴みかかり、暴れまくり、ルシル兄に追い出されたことまでなんだか映像なくても目に浮かぶあたり、脚本の妙と言わずなんと言いましょう。


そして、フェリスと共にローランドを脱出しながら、ライナが決意したのは・・・

「どんな闇に堕ちていようと、必ずお前のところへ俺は辿り着いてみせる。そして、シオン、お前に最高の親友を持ったって言わせてやる。俺を泣きそうな顔で殺そうとして殺せなかったこと後悔させてやる!!」

フェリスに対して「行くぞ、相棒」と言うライナは、ああ、本当に吹っ切れたんだなと・・・・・・。

この先、シオンを救うのは、そりゃあ・・・・・・・・・・・大変なんでしょうけど、絶対にやってみせるという強い瞳。

エンディングの歌をフルコーラスで被せる演出も上手い。

「守れるように・・・君を・・・」というのは、ライナの願いでもあったという、憎い演出!

シオンはライナを守りたいから、ある意味「正気のまま闇に一人で何もかもかかえて堕ちた」

だから、そんなシオンに対して
「一人で抱えて! 一人で絶望して! なんで、俺に頼らない!!」っていうのは、かつての「寂しがりの悪魔」が「一瞬でも友のために生きられればそれで良かった」というのと、逆のようでもあり、運命をなぞる同質的なようでにも感じられました。

とはいえ、あの時に、寂しがりの悪魔を犠牲にしたことで、結局、勇者も救われたのか、救われなかったのかは、かなり謎。
しかし、どう考えてもあんな優しい可愛い悪魔を犠牲にして、友を犠牲にして、世界を救って(勇者の場合は、世界を創ったのかな?)、そうして目的を達成しても・・・それで勇者は幸せになれたか?
無理でしょうねえ。

と考えると、寂しがりの悪魔と同じやり方をライナが取ることは、シオンの幸せにはならないということに帰結します。
つまり、例えば、「ライナがその身なり命なりを、シオンの苦悩を知って自発的にシオンに捧げてしまう」のは、結局、かつての伝説の二人と同じように、不幸になってしまうのだと思われます。はい。二人共が。


だから、ライナは探すのでしょう。

遠い遠い、今となっては遠い約束となった「俺についてこい」とシオンが言ったその言葉を胸に。

ライナこそが祈っているのでしょう。
シオンが一人で思い詰めて、抱え込まないで、笑っていられる世界をシオンに見せてやりたいと。


それは、かつてのアパルトヘイト時代の南アフリカにおいて「人種差別が無くなる時代がくる」ことは「遠い夜明け」にしか感じられなかったのにも近い、本当に遠い約束。
(ちなみに、今も南アフリカの政治は・・・・そりゃあ難しい状況のままですけど・・・・ましになったと言えるかどうかすら微妙ですけど・・・・)

でも、映画「遠い夜明け」では、遠かった夜明けも、今もなお完全ではないけれど、でも、アパルトヘイトがなくなったように・・・そして、日本が徳川時代から明治維新を経て第二次大戦までの狂ったような戦争の時代を経て、今の「普通に、皆が笑っていられる世界」が確かに実現できたのと同じように。


きっと、ライナは叶えるから。
相棒のフェリスと一緒に。

誰よりも大切な大切なシオンのためだから。

「俺は死んでたんだ。誰かを愛することも何もかも諦めていた。俺は化け物だから」
でも、シオンがライナに「ついてこい、お前がかつて望んだ世界を見せてやる」と約束してくれたことで、本当にライナは救われたから。

「俺は・・・お前に本当に救われたんだ。だから、お前にそれを返してやりたい」っていうのは、今度は、自分の身代わりかのように絶望に足掻いている大切な存在であるシオンのことを本当の意味で「守りたい」から。


そのために強くなる。

ライナは、もう決して自ら死ぬことはない。死ぬことを望まないし、「生きてていいのかな?」という疑問すら口にすることはない。きっとそれだけ強くなる。だって、ライナはシオンを諦めないのだから。

そして、それは決して「夢」でも絵空事でも幻でもない。いつか実現する未来。


二人の昼寝王国よ、永遠なれ!!!! ・・・・と、叫びたくなるエンドでした。

だから・・・・この続きはもういいです。もう、これで充分です。


ライナがシオンを諦めない限り、不可能はないと、このアニメで信じることができるから。

私はそれで、いいのです。いつか二人が幸せになる日をフェリス視点で見られるといいなと夢見ることができたから。

アニメ伝勇伝の皆様! 素晴らしいラストを、素晴らしい物語を、本当にありがとうございました!!!
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「直chan」

 最終話、とりあえず見ましたが、一度見ただけでは、把握できないかも……。ちょっと、詰め込み過ぎのような気もしますし、期待していたフェリスとキファの接触もなかったのが、残念ですね。この終わり方では、確実に2期がありそうな気がします。シオンが壊れていくのをこれ以上見たくないという気持ちもありますが、やはり、続きが気になるという思いの方が強いかも知れません。
by 「直chan」 (2010-12-19 00:04) 

Echidna

直chan様
確かに、一度見ただけでは・・・ですね(笑)

白状しますと、私、冒頭の「黒い勇者と寂しがりの悪魔」のやりとりがあまりにツボすぎまして(特に、もう、あの寂しがりの悪魔の『いいよ、君になら』というあたりが、可愛くて、愛しくて・・・)、多分、冒頭だけなら、すでに10回以上再生して繰り返し見てる気がします(^_^;)

そして、本編についても、3回?いや4回?一旦停止したり、戻したりしてるので、実質5回ぐらいは軽く見てるような気がします(苦笑)

なので、一度だけでは把握できないかもとのお気持ちや、続きが気になるとのお気持ちも、すごく良く分かります。
(それでも、寂しがりの悪魔と勇者があれだけ相思相愛なら、もう、シオンとライナの二人が惹かれあってもしょうがないよね!とか、寂しがりの悪魔があまりに無邪気な「尽くし系」なので、それなら、ライナがシオンのためにならなんでもしても当たり前! とか幸せな未来像の幻影が見えましたので、ま、いいか!と・・・点数としては甘いでしょうか?・・汗)

コメントありがとうございました! ご来訪感謝ですv


by Echidna (2010-12-19 02:46) 

こいさん

コメント&トラックバックありがとうございました。
お返事書きましたのでよろしければご覧ください。
by こいさん (2010-12-22 18:10) 

Echidna

こいさん様
トラックバック&お返事ありがとうございました。
ええ、こいさんの記事は本当に楽しくて、素敵でしたv
ご来訪感謝です。
こいさんの記事に出会えて良かったなあと、「伝勇伝」好きな私は素直に思いますよ?(笑)
これからも楽しい記事楽しみにしております。ありがとうございました。
by Echidna (2010-12-22 23:44) 

空子

はじめまして。
コメントありがとうございました♪
最終回は特殊OPとEDもよかったですね(*´∀`*)

寂しがりの悪魔が自分を差し出すシーンは、私もぐっときました。
その愛情はとても美しかったけど、でもライナならきっと別の道を見つけてくれますよね。
そういう希望を感じるラストで安心しました。
愛がいっぱいの記事、とても楽しかったです♪
by 空子 (2010-12-23 20:32) 

Echidna

空子様

こちらこそありがとうございました。
はい。あのシーン、ぐっときますよねv
ええ、ライナは「別」の道を見つけて「二人が幸せ」になってくれるはず!!
という希望を感じるラストに、私もとても安心しました。

ご賛同感謝ですv
長い記事・・・・・(長すぎ?)読んでいただけて嬉しかったです。
はい、愛だけはあります(笑)

ありがとうございました。
by Echidna (2010-12-25 00:48) 

理美

昔の日記に書き込んでしまい
すみません

初めまして、
理美と申します
どうしてもコメントを書きたくて・・・

私は伝勇伝の原作のファンで
原作を空きすぎるあまりアニメはチェックしていなかったのですが
初回限定のDVD特典に書き下ろし冊子がついていると本で読み
つい先日から少しずつDVDを集めつつ、アニメも見始めました
アニメは原作の内容から端折られている場面も多く、
アニメから入った人にはわかりづらいんじゃないかな?と思ってました
連休に入り時間が出来たので、色々な方の感想を読み
皆さんどう思ってらっしゃるのかどきどきしながら拝見させて頂いてたのですが・・・

まだ全部DVD発売されているわけではないので
私はアニメのラストは知りません
けど、Echidnaさまのブログを読ませて頂き、涙が出ました
2クールという限られた時間の中のアニメだったので
分かりにくい点も多かったと思うのに
深い愛情を込めた内容の感想だったので・・・
原作好きだからアニメ見ないと言っていた自分が恥ずかしくなりました
こんなに深く掘り下げて考えてらして本当に頭が下がります・・・
素晴らしい感想日記を有難うございます
こんな風にかくとおかしいですけど、とても嬉しかったです

伝勇伝の素晴らしいところはいくつもありますが
中でもどんな状況でも各キャラたちが本当にひたむきさを忘れずに
どんな矛盾や絶望の中でも進んでいくところに惹かれます
涙流しながらずっと応援していきたくなります

これから発売されていくDVDで怒涛の展開になっていくのでしょうが
原作・アニメこだわらず、一つの作品としてめいっぱい楽しみたいと思います
長文になってしまいすみませんです
気持ち悪かったら申し訳ないです

有難うございました
by 理美 (2011-05-02 19:44) 

Echidna

理美様
コメントありがとうございます。
こちらこそ、「アニメしか知らない(←おひ?)」な、「伝説の勇者の伝説」ファンとしては、原作ファンの方から石を投げられそうな不届き者ですのに、優しいコメントを本当に、感謝感激です。

はい、アニメは確かに時間の制約があって「不完全」なものといえばその通りで、実際、同時期、このアニメをみていた友人からは「・・・・・あれ、分かったの??」と、怪訝な顔をされてしまったほどです(苦笑)

確かに、原作と引き比べれば、そりゃあ足りないところは、山ほどですし、実際、私も公式HPなどから、色々設定説明をチェックしたりしてましたので、逆に、小説ファンの方からすれば、「あれじゃあ足りない! 絶対足りない!」となるのも無理ないかと思います。

それでも、アニメはアニメとして、スタッフの熱意がとても素晴らしくて、思わず引きこまれる情熱と愛情に溢れたものだったと思います。

そうでなかったら、うっかり、ジャンルも甚だしく違うのに、伝説の勇者の伝説の「シオン×ライナ」かつ「黒い勇者×寂しがりの悪魔」の4人まとめて幸せにしてしまえ! なんて考えた挙句に、我慢できずに、うっかりと同人誌なんて作ったりしません(笑)多分、アニメスタッフの伝勇伝への愛情が伝播したものと思われます。それだけ、パワーと愛のあるアニメでした。

ラストは怒涛の展開で、原作ファンの方には、きっとどうしても「物足りない」ところもあるだろうとは想像に難くありませんが、アニメスタッフの情熱だけは、保証いたします。愛に溢れた良いアニメだったと断言いたします。

ですので、どうぞ、楽しみに「アニメならではの、伝勇伝」を、原作ファンの方にもお楽しみいただければなあ、と願ってやみませんv

こちらこそ、長々と何やらかいつまんで言えば「好きだ~!」としか叫んでいないような感想日記でしたが、喜んでいただけて、本当に私こそ嬉しかったです。

あ、アニメのラストは、まさに、理美様のおっしゃる
「どんな矛盾や絶望の中でも、ひたむきに進んでいく」
を、メインテーマに据えたエンドになってますv

そして、私もそこが一番好きです。

アニメのキャッチコピーの「運命に翻弄され、それでも、運命に抗う者達の物語」とあるのが、最後まで貫かれたアニメだったなと思います。

この「それでも」というのが好きです。
そして、私も彼らキャラ達のひたむきさが大好きです。

重ね重ね、こちらこそ本当にありがとうございました。
by Echidna (2011-05-03 04:14) 

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